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なぜアパレル業界に魅了されたのか、もう覚えていない
服が好きになったきっかけも何だったっけな〜

 

始まりは忘れたけど、憧れをより強めたのは当時13歳の私が観た、"私以外、全員悪女"のドラマ『ファーストクラス』だった。


2014年 フジテレビで放送開始された沢尻エリカが主演のドラマ

古い言葉で喩えると肉食女子みたいな、華やかでドロドロしたファッション・出版業界でギラギラした女たちの陰湿な戦いが繰り広げられ、主人公が血汗涙垂らしながら抗うストーリー。

 

私はヴィランが好きだから、"全員悪女"のこのドラマが超絶マッチした。(結局"私以外"じゃなくなる)

化粧・服・オシャレなデザイン……登場人物たちが狂わされている世界のキラキラしたそれらは、「女の子なら当然好きになるもの」が今より固定化されていた時代に生まれ育った私も、当然の様にそういうものに惹かれた。

 

フィクションとはいえ描かれるものは多少リアルだし、実際はこんなことに巻き込まれたら耐えられないだろうな〜とか思った。でも好きな服を着て好きな服を発信して、大多数に影響を与えられる仕事がやりたいという気持ちは、変わらないどころか後押しされた。

高校生になってスマホを買ってもらって、PCしか持ち合わせていなかった当時よりネットに浸るようになった。趣味にも没頭したけど、将来やりたい仕事とか考えるのが大好きだったから、色々調べていくうちにMD(マーチャンダイザー)という仕事を見つけて、自分がやりたいのはこれだ!と微妙なフリマの中から宝を見つけた気持ちになった。でもそれだけじゃなくて、見なくてよかったはずの情報にも触れることになった。

 

特にTwitter。コイツがすべての元凶である。

 

今や何も知らぬフォロワーに持て囃されてる美容垢もどきも虚言美容垢として活躍しヲチられ、夜職や整形の情報はまだ少しコソコソされてて、似合う服似合わない服の判断材料が謎に発生しはじめ、アングラであるべきものがまだアングラの体裁を保っていた2010年代後半。

 

 

見えたものなんでもパブサして、野良に現れた垢のプロフを何となく漁ったりするようなキモツイ廃の私が、そういうアングラな情報にたどり着くのはそう遅くなかった。

 

 

骨格 顔タイプ 肌色ベース 

それくらいならまだ可愛いもんだ

 

 

そもそも顔が問題なんじゃないか、二重…は何とかなるとして鼻が低い、鼻中隔が気に入らないから鼻中隔延長しなきゃ。80万。鼻先の高さも出したいから耳介軟骨移植で50万とI字プロテーゼも入れなきゃダメだ。あと目と目が離れてる気がする。目頭切開?このクリニックの症例綺麗だな。20万。頬骨が出すぎてる気がする、これのせいで斜めの顔が気持ち悪いんだ…頬骨削った方がいいから200万。タレ目も治さないと、これは絶対だから40万。外国人とまで行かなくても推しくらいの堀の深さが欲しい、ヒアルかな。矯正して顎もプロテーゼかヒアル入れないと。身長伸ばす手術もあるんだ……このまま死ぬくらいなら一瞬でも高くなって死にたい。1000万。

 

 

他にも山ほどある手術のデメリットも後遺症も毎日毎日調べて、病院の善し悪し、先生の選び方、授業中にやりたい手術と欲しいものをノートにたくさん落書きする日が卒業まで続いた。

友達に、ここ治したいから整形したいんだよね〜、そうなんだ私はこれが気になってて〜なんて気楽に話してた。その時は楽しいのに、家に帰って情報収集してると、治さなきゃいけない箇所の多さと、絶対的に醜い自分の容姿に耐えられない日が増えていった。

 

Twitterとネトサで情報漁りながら本気で自分の容姿が嫌いになって、こんなブスじゃ服なんて何着たって豚に真珠でしかないと思った。
何も着ても楽しくない。似合わない服を着て外に出るのが恥ずかしい。人に顔を見られるのが怖い。なんで私はこんなに……て何度も沈んだ。

死にたいと考え出したのもこの頃。

 

知らないでいる方が幸せな事もあるだとか、深追いしない方が人生は楽しいとか

そんな事ないと思ってるけど、これに関しては反論の余地がない。

 

服を楽しみたいけど楽しみ方が分からない、恥ずかしいって考える人の力になれる事がしたいな〜とか(何様?)、英語勉強して海外飛び回って色んな国の服に触れるバリキャリになりたいな〜とか、アホ面かいた純粋な夢を持ってた私は、情報の圧に負けて確実に死んだ。


大学に入って、ネットもリアルも関わる人や触れる情報が変化していくにつれ、ここ1.2年で随分マシになった。たまーに猛烈に病むことはあるけど、前とは比べ物にならないくらい。友達にも言われた……
でも、アパレル業界を純粋に目指す気持ちは復活しなかった。


こんな状態でも一応、大学の自由テーマのレポートや卒業制作は、少し角度が違うけどアパレル業界に関するテーマで一貫してやってきた。
卒業した今はもうそんなものを書くこともないし、私の服に対する熱を最後に振り絞ってきたんだと思う。


今思えば本当に馬鹿みたいだ。
整形の成功なんて、いつボロがでるか分からないんだから死ぬまで判断できないって思ってたくせに、あれだけデメリット調べてたと思ったのに、当時流行ってた施術もたった数年で禁忌扱いだ。

どんなに流行ったってどんなにイイものとされたって、時が経てば変わる。見えてなかったものが見えるようになる。諸行無常、終わりはない。常にアップデートされていくんだ。流されるべきじゃなかった。


物事の判断が甘くて、それを理解できずにちゃんと見極めてると自惚れてた頃はまだ10代だ。
今は別世代の同じ10代が、同じ道を辿ってるように思う。
自分から情報を求めてたあの頃とは違って、勝手に流れてくるからなかなか防ぎようがない。


私に出来ることは何もないけど、この情報が濁流する社会の中で、どうか、好きなものを奪われないでほしいと本気で願う。
容姿、その他環境諸々が本当に辛くて耐えきれない子たちが沢山いると思う。でもその子たちにもいつか、歪んだ社会的価値観の負荷が少しでも軽くなる日が来ますように。